ヨブの涙と教会の鐘 〜私が洗礼を受けるまで 2〜

あれはイースターの前、3月半ばのまだ寒い日だったと思います。待ち合わせはミサの始まる10分前の9時20分。寒空の下でシスターを待たせてはいけないと思い、少し早めに家を出ました。教会までは、歩いて30分ほど。(私のアパートは駅から少し遠く、どのルートで行っても歩いて行くのが一番早かったのでした)

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ヨブの涙というロザリオ

シスターと教会の前で待ち合わせ、教会の聖堂への階段を登っているとシスターが
「あなたになにを差し上げようかと思ったのだけど」
と、優しい笑顔と一緒にポケットから取り出したのは、茶色い涙型の木の実で出来たロザリオでした。

「私も同じのを使っているの。木の実で出来ていて、使っているうちにツヤツヤになるのよ」
と、同じものを別のポケットから取り出してツヤツヤになったロザリオを見せてくれました。

後に、それが「ヨブの涙」と呼ばれるロザリオだとわかるのですが、私が初めて手にしたロザリオでした。「ヨブの涙」については、また後で書こうと思いますが、マザー・テレサも「ヨブの涙」(色は白ですが)を愛用していたそうです。

私は今まで、何本もロザリオを作ってきましたが、未だに私がお祈りに使うのは、そのシスターから頂いた「ヨブの涙」です。

初めてのミサ

シスターと一緒に、聖堂入口の受付で「聖書と典礼」という、その日のミサの朗読箇所などが印刷された冊子を受け取り、聖歌集の棚で「歌はこの本に載っているから、これを持ってね」とシスターから典礼聖歌集を渡されました。

真ん中よりも少し後ろの席に着くと、シスターが、
「プリントに聖歌の番号が書いてあるから、始まる前に聖歌集を見てしおりの紐を挟んでおくといいのよ」と教えてくれました。

それから、シスターは赤い小さな手帳のような冊子を私に貸してくれました。それには、ミサの流れが載っている、いわゆる「初心者のためのミサマニュアル」のようなものでした。

ミサが始まる時間になると、教会の鐘が鳴りました。それは、とても美しい心が透明になって行くような音でした。
みなが一斉に立ち上がり、パイプオルガンの音がながれると、入祭の歌が始まりました。

典礼聖歌のマークした箇所を見ながら、私はみんなの歌う声を聞いていました。
ミサは「歌ミサ」というもので、ほとんどの言葉にはメロディーがついています。初めての私には、それが何だかとても新鮮な感じでした。

初めてのミサは、正直、何をやっているのかさっぱりとわかりませんでした。シスターが赤い本をめくりながら、小声で「今はここね、つぎはここよ」と教えてくれるのですが、とにかく周りの人と同じように、立ったり座ったり跪いたり……、でいっぱいいっぱいだった気がします。

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