グレゴリオ聖歌 Triplexネウマ観察記|ラオンとアインジーデルン

Triplexのネウマ

Triplexを眺めていたある日、目に飛び込んできたのは——グルグル。
筆が止まらずそのまま回転したかのような、勢いあふれる謎のネウマ。

「えっ、なにこれ?」
「……これ、どう歌えっていうの?」

そんな戸惑いとときめきのあいだで、私は完全にハマりました。
そう、これがラオン修道院写本(Laon 239)との出会いでした。

ラオン修道院のネウマたち 情熱と勢いの嵐

ラオンのネウマ、見ていて飽きません。
グルグル、たんぽぽの綿毛、草のようにササッと流れる線、ラクダのコブ(のような謎マーク)……。

どれもこれも、自由奔放。情熱的。勢い重視。
「ここ、感情乗せといてね〜♪」みたいなノリが、なんとも人間味を感じさせてくれます。

読みやすいかと言われたら、うん、まぁ……愛でる対象としては最高です。
妄想も膨らみます。

アインジーデルンのネウマ 冷静と計算の世界

ラオンが「感情と即興」なら、アインジーデルン(Einsiedeln 121)はまさに「理性と構造」。
点、棒、リズム、重なり。すべてが計算され尽くしてる感じ。

Triplexを開くと、ラオンのグルグルの下に、
まるで数式のようなアインジーデルンのネウマがちまちま並んでいることがあります。

グルグルネウマ
赤い方がアインジーデルンのネウマ
ちまちましたネウマ
ここには数式っぽいネウマも

この上下のギャップがたまらない。

  • 上:勢いで筆を走らせたグルグル
  • 下:冷静な打点分析担当・アインジーデルン

このネウマたち、ほんとに同じ曲を表してるの!?とツッコミたくなります。

ギャップに萌える理由

私はこの「感情と構造の二重奏」にやられました。

  • 歌の「気分」を伝えるようなラオン
  • 歌の「骨格」を示すようなアインジーデルン

もしかすると、どちらか一つだけでは見えなかった何かが、このギャップの間に浮かび上がってくるのかもしれません。

ギャップ萌え考察

  • ラオンの「身振り」
    ラオンのネウマは、指揮者の手の動きや、歌い手の身振りをそのまま書き留めたかのような、とても流動的で芸術的な形。音の高さだけでなく、音の強弱、アタック、装飾、そして何よりも感情的なニュアンスを強く伝えているように見えます。まるで、歌い手の情熱がそのままインクになったかのよう。見ていると、まるで音が踊りだしそうな感覚になります。
  • アインジーデルンの「精密さ」
    アインジーデルンのネウマ(ザンクト・ガレン系)は、より体系的で規則的。一つ一つのネウマの形が洗練されていて、リズムや音の正確な連なり、細かな装飾音を緻密に表そうとしています。まるで、祈りを伝えるための、精密に計算された記号体系のようです。

ネウマ萌え、そして祈りのかたち

ネウマって、祈りの音楽の記憶装置。
千年前の修道士が「ここ、こう歌いたかったんだよね」って残した筆跡に触れると、
その距離の遠さと、同時に不思議な近さを感じます。

Triplexって、最初はちょっと怖いけど、
眺めてるだけでも十分オタク心が満たされるのです。