グレゴリオ聖歌|Ave Regina Caelorum ― 四旬節へ向かう、凛としたマリア讃歌

前回は、待降節から降誕節にかけて歌われる Alma Redemptoris Mater をご紹介しました。

今回はその次に歌われる

Ave Regina Caelorum(アヴェ・レジナ・チェロールム)

を詳しく見てみたいと思います。

個人的には、この曲を聴くと「四旬節が近づいてきたな」

という気持ちになります。

華やかさよりも気高さ。
静けさの中にある美しさが印象的なマリア讃歌です。

Ave Regina Caelorumとは?

Ave Regina Caelorum は、

「天の元后、喜びあれ」
あるいは
「天の女王、喜びあれ」

と訳されます。

伝統的には主の奉献(2月2日)から聖週間まで歌われます。

ちょうど教会暦では、
降誕節が終わり、四旬節へ向かって歩み始める時期です。

歌詞には何が歌われているの?

この曲では、マリア様がさまざまな称号で呼ばれます。

天の元后

曲名にもなっている
Ave Regina Caelorum は、

「天の元后よ、喜びあれ」
という意味です。

ここではマリア様が天の女王として讃えられています。

天使たちの君主

続いて、
Ave Domina Angelorum
という言葉が現れます。

これは
「天使たちの君主よ、喜びあれ」
という意味です。

Alma Redemptoris Mater が
「救い主の母」
という側面を強く歌っていたのに対し、

Ave Regina Caelorum では
栄光のうちにあるマリア
が描かれています。

世界に光をもたらした門

歌詞には、

Salve radix, salve porta,
ex qua mundo lux est orta

という一節があります。

喜びあれ、聖なる根よ。
喜びあれ、門よ。
あなたから世界に光が昇った。

という意味です。

ここでも視線はマリア自身で終わらず、
そのマリアを通して来られたキリストへ向かっています。

マリア讃歌の多くに共通する特徴かもしれません。

なぜこの季節に歌われるの?

Ave Regina Caelorum が歌われるのは、
主の奉献から聖週間までです。

教会暦で見ると、
降誕の喜びが少しずつ遠ざかり、やがて受難と復活へ向かう季節です。

Alma Redemptoris Materとの違い

前回ご紹介した Alma Redemptoris Mater は、

  • 救い主の母
  • 海の星
  • 天の門

といった表現を通して、
受肉と降誕の神秘を見つめる歌でした。

一方、Ave Regina Caelorum は、

  • 天の元后
  • 天使たちの君主
  • 栄光ある乙女

としてマリア様を讃えています。

どちらも美しいマリア讃歌ですが、
見つめているマリア様の姿が少し違うのです。

少しだけオタクな話 ― 第6旋法の魅力

ここから少しだけ、グレゴリオ聖歌オタクの話です。

Ave Regina Caelorum は、

第6旋法(Mode VI)

の曲です。

旋法の性格をひと言で説明するのは難しいのですが、
第6旋法には

  • 柔らかさ
  • 明るさ
  • 安定感

を感じることがあります。

ただし、
復活節の Regina Caeli のような

「アレルヤ祭り!」

という明るさではありません。

また、Salve Regina のような

「涙の谷を歩む巡礼者」

の雰囲気とも違います。

私には、
凛とした美しさ
という言葉がしっくりきます。

季節との相性

教会暦の流れで見ると、

Ave Regina Caelorum は

  • 冬の静けさを持つ Alma Redemptoris Mater
  • 復活の喜びに満ちた Regina Caeli

のちょうど間にあります。

そのためか、旋律にも独特の緊張感があります。

個人的には、この曲を歌うと

「ああ、四旬節が近づいてきたな」

と感じます。

教会暦を耳で感じる瞬間の一つです。

派手な曲ではありませんが、
どこか背筋が伸びるような美しさがあります。

まとめ

Ave Regina Caelorum のポイント

  • 主の奉献から聖週間まで歌われる
  • 「天の元后」としてマリアを讃える歌
  • 栄光のうちにあるマリアが描かれている
  • 第6旋法による凛とした美しさが魅力
  • 四旬節へ向かう教会暦によく似合う

同じマリア讃歌でも、
Alma Redemptoris Mater と比べると雰囲気はかなり違います。

そして、その先には復活節の喜びを歌う

Regina Caeli

が待っています。

次回は、アレルヤが何度も響く復活節のマリア讃歌、
Regina Caeli をご紹介したいと思います。

Gallery & Motion
作品の動画などをご覧いただけます