新教皇レオ14世誕生―“レオ”という名が語るカトリックの歴史と祈り

vatican

先日5月8日、白い煙が上がって、新しい教皇が選ばれました。けれど、聞き慣れない名前……「えっ、誰?」と、首をかしげた方も多いのではないでしょうか。私もその一人でした。

それもそのはず。選ばれたのはアメリカ出身でペルーでの宣教経験もある、まさに“世界教会”を象徴するような人物、ロバート・プレヴォスト枢機卿。そして彼が選んだ教皇名は――「レオ14世」。

レオ……? ライオン?
それって、あのレオ1世とかレオ13世とかの「レオ」? そう思った途端、聖ミカエルの祈りや、アッティラとのにらみ合い(!)まで頭の中を駆けめぐります。

今回は、新教皇レオ14世の人物像とともに、「レオ」という教皇名に秘められた歴史や祈り、そしてこれからの教会にどんな希望が託されているのかを、のんびり・やさしく・ちょこっとのミーハー心を交えてご紹介します。

教皇レオ14世とは?

教皇レオ14世ことロバート・プレヴォスト枢機卿は、アメリカ・シカゴ出身。
アウグスチノ会の司祭として長年ペルーで宣教活動を行い、文化の橋渡し役として評価されてきた人物です。

主な経歴は……

  • アウグスチノ会に入会、神学とカノン法を学ぶ
  • ペルーで約15年にわたり司牧と修道会指導に従事
  • 教皇庁では司教省長官として世界中の司教任命に関与

そして2025年、コンクラーベで選出され、アメリカ出身・アウグスチノ会出身としては初の教皇となりました。

なぜ「レオ」?教皇名の意味と象徴

「レオ(Leo)」はラテン語で“ライオン”を意味します。
ライオンは旧約ではユダ族の象徴
、そしてキリストの象徴ともされ、「勇気・守護・王の威厳」を表す動物です。

歴代教皇の中でも、「レオ」の名が人気なのも納得です。
歴代の「レオ」で有名な方といえば……

  • 教皇レオ1世(レオ大王):教義の守護者、ローマの和平交渉者
  • 教皇レオ13世:近代カトリック社会教説の父、『聖ミカエルの祈り』の制定者

レオ14世の名には、こうした力強く霊的な伝統への敬意が込められていると考えられます。
ちょっと硬派で、でもどこか親しみやすい、そんな印象です。

意外な選出、でも納得の背景

そして、コンクラーベの時にはあまり注目されていなかった人物で、「誰それ?」と驚いた方も多かった新教皇レオ14世。

けれど、その背景を知ると選出されたことに納得感も生まれます

新教皇レオ14世は、イタリアにルーツを持ちながら、ペルー国籍も有する多文化的な背景の持ち主です。これは、地球規模の課題に向き合う現代の教会にとって、大きな意味を持つ選択かもしれません。

さらに注目すべきは、そのユニークな経歴。学生時代には数学を学んでいた経歴もあり、祈りと論理の架け橋としての期待も高まります。

13人の「レオ」の名を受け継ぎながら、レオ14世はこれまでにない柔らかさと知性を携えて、静かに教会の舵を取ろうとしています。

偉大なるレオたち:1世と13世の足跡

教皇レオ1世(在位440–461)

レオ大王(マグヌス)」と称される最初のレオ教皇。彼の偉業といえば:

  • アッティラ王との和平交渉:軍隊を持たずにフン族を退けた伝説
  • カルケドン公会議で教義確立:『レオの書簡』でキリストの神性・人性を明確化

当時の教会は統一された体制ではなく、司教の集合体のような状態でしたが、彼は「ローマ司教=普遍教会の長」という意識を定着させた先駆者でもあります。

教皇レオ13世(在位1878–1903)

近代の教皇の中でもカリスマ性のある存在。

  • 労働者の権利を擁護した回勅『レールム・ノヴァールム』を発布
  • 教育と哲学への理解を深め、トマス・アクィナスを復権させた人物
  • そして、後述の「聖ミカエルの祈り」の制定も彼の功績です

『レールム・ノヴァールム』

教皇レオ13世が発表した回勅『レールム・ノヴァールム』(1891年)は、近代社会における労働者の権利を守るための重要な教えです。この回勅では、労働条件の改善、賃金の適正化、働く人々の尊厳を守ることが強調され、カトリック社会教説の基礎を築きました。今日でも、労働に関するカトリック教会の立場を理解する上で欠かせない文書とされています。

幻視から生まれた「聖ミカエルの祈り」

レオ13世がある日、ミサ後に幻視を見たと伝えられています。
それは、サタンと神の対話――

サタン:私はあなたの教会を壊してみせる
神:ではやってみよ。だが人類には助けが与えられる

その直後、レオ13世は執務室にこもって、一気に「聖ミカエルの祈り」を書き上げたとされています。

この祈りは、こう始まります:

「聖ミカエル、大天使よ、我らを守り給え。悪魔の邪悪なる計りごとより我らを護り給え…」

彼はこの祈りをミサ後に常に唱えるよう命じたほど、その重要性を感じていたのです。

現代においても、教会や信者が霊的な混乱や攻撃に直面している時代において、この祈りは再び注目を集めています。

レオ14世に託された教会の未来

新教皇レオ14世が直面するのは、以下のような課題ではないかと思われます。

  • 環境問題と教会のエコ倫理
  • 移民・難民支援の強化
  • 女性・平信徒の役割拡大
  • 教会の信頼回復と霊的刷新

彼は、伝統を重んじながらも対話を大切にする人物として、教皇フランシスコの改革路線を穏やかに受け継ぐのではないかと言われています。

「優しくて勇敢な、現代の“ライオン”」として、これからどんな道を歩むのか――信仰者として静かに、けれど楽しみながら見守っていきたいと思います。