ロザリオ ヨブの涙「Job's tears」
私が初めて手にしたロザリオ「ヨブの涙」はシスターから頂いたものでした。小さな木の実で出来たロザリオは、素朴で暖かい感じがします。
私が頂いたこのロザリオは、お店で売られているのを見たことがないので、おそらく修道会のシスターかブラザーが手作りしたものだと思います。あまり手に入らない、めずらしいロザリオらしいので、これをシスターから頂けた私は、とても幸運だったと思います。
数珠玉は涙のかたち
このロザリオに使われているビーズは、草の実です。数珠玉と呼ばれる草の実で、私の育った田舎にもあった草の実です。私のロザリオは茶色い実ですが、白いものやグレー、黒いものもあり、マザーテレサは白い実でできた「ヨブの涙」を愛用していたそうです。
この草の実が、涙のかたちをしていることから「ヨブの涙」と呼ばれるようです。
ここに出てくる「ヨブ」は人の名前で、旧約聖書に登場する人物です。
ヨブはとても信仰深く神様から愛されていた人で、とても幸せだったのですが、ある日、何もかもを失くし、不幸のどん底に落ちてしまいます。そしてたくさん涙をながしますが、最後はそれが喜びの涙になります。
ヨブ記
「神様がいるのに、なぜこの世に苦しみや悪が存在するのか」と言うテーマを扱ったのがこの「ヨブ記」です。
ヨブは神様に信頼され、愛されていました。悪魔が神様に「ヨブが忠実なのは、多くのものを与えられ、祝福されているからだ」と言います。つまり悪魔は、ヨブは自分に利益があるから神様に忠実なのだと言うのです。
そして、神様がヨブから全てのものを取り上げたら、「神を呪うだろう」とまで言います。すると神様は「では、そのようにしてみなさい。ヨブが私を呪うのか見てみよう。けれど、彼を殺すことは絶対にしてはならない」と言います。
(なんだか、悪魔と神様の賭けに巻き込まれてしまったヨブさん、可哀想……)
最初に悪魔は、ヨブから財産も子供も奪います。その次にヨブをひどい皮膚病にしてしまいます。当時の社会では、皮膚病は社会的に死を宣告されたことを意味しており、ヨブは灰の中に座っていました。そんなヨブに妻は「神を呪って死ぬ方がマシだ」と言います。けれどヨブはこう答えます。
「お前まで愚かなことを言うのか。わたしたちは、神から幸福をいただいたのだから、不幸もいただこうではないか。」
このようになっても、彼は唇をもって罪を犯すことをしなかった。— 『新共同訳聖書』より引用。
それは、私にとって、とても印象的な言葉でした。
辛いことが続いたとき、私は神様に文句を言ってしまいます。ヨブのように「不幸も頂こう」などとは思えません。そんな時は、このヨブの言葉を思い出し、なんとか乗り越えようと思うのです。
私が、このロザリオを使い続ける理由は、このヨブの言葉があるからかも知れません。